今回は一休みして2月3日のNHKBS1の「シリーズ医療革命、血糖値スパイクの脅威」について紹介をさせて頂きます。勿論、この番組を見られた方には申し訳ないと思います。
「血糖値スパイク」とい う言葉はまだなじみが無いかも知れませんが、内容は重要でこれを正しく認識していることは将来、歯周病対策にも役立つかも知れません。血糖値は通常、空腹時に測定することが多いのですが、食後2時間後ぐらいの測定を行うと急激に値が上昇(140以上)している場合があり、このことが動脈硬化、心筋梗塞、癌、アルツハイマー病などと関係があるとのことでした。空腹時血糖値が正常でも血糖値スパイクが生じるケースが多いそうです。歯周病との関連性もぜひ、調べてみたいものです。
野口俊英
糖尿病には1型と2型とがありますが、歯周病と類似性の高い2型糖尿病との関係についてまず述べます。2型糖尿病と歯周病は前回述べましたように共に生活習慣病と認定されています。つまり、両方の病気共に生活習慣の乱れ(過度の飲酒、喫煙、運動不足など)が病 気の発症や進行に大きな影響を与えることになります。このことを裏付けるように2型糖尿病患者では歯周病の発症率が非糖尿病患者に比較して2.6倍も高いことが報告されています。さらに、血糖コントロールの不良な2型糖尿病患者では、歯を支える歯槽骨の吸収が著しいことも報告されています。
野口俊英
以前から歯周病と糖尿病とは何らかの関連性があるのではないかと言われてきましたが、それを科学的エビデンスによって証明することはなかなか出来ませんでした。しかし、近年になって両者 の関係を基礎的研究、動物実験、疫学的および臨床的研究などにより追及する論文が多数報告されるようになってきています。そして、これらの研究の詳細な分析、(システマティックレビューまたはメタアナリシスなど)の結果、両者の関連性が客観的に評価されるようになってきました。それによりますと、歯周病と糖尿病とには多くの関連性があることが明らかになり、歯周病は糖尿病の合併症の1つであることが医科の分野でも認知されるようになってきています。
野口俊英
これまで何回も述べてきましたように歯周病は歯を支えている歯周組織(歯肉、歯槽骨、歯根膜、セメント質)に生じる炎症が最大の局所的な原因ですが、その炎症に影響を与える多くのリスク因子が存在することが明らかにされつつあります。
その中でも口(口腔)以外の部分のカラダ(体)の病気が歯周病と関連性がある(periodontal medicine)のではないかという考え方が、近年になり急速に拡がり、それらの関連性を確認するための多くの研究がなされています。次回からはそれらのカラダの病気で特に注目されているいくつかの病気と歯周病との関連性について述べていきます。
野口俊英
スケーラーが届きにくいような深い歯肉縁下バイオフィルムの完全な除去は、化学的方法や機械的方法でも不可能ということになります。それではどうすれば良いのでしょうか?その場合には以前にも述べたように歯周 ポケットそのものを歯周外科により存在しなくしてしまうことです。最も多く行われる基本的手術はフラップオペレーション(FOP)という方法ですが、近年ではこの手術法を改良したいろいろな方法(再生療法など)も行われています。これらの手術法については以前に述べていますので参考にして下さい。
野口俊英
前回、述べましたように歯肉縁下バイオフィルムコントロールの主体はスケーラーを用いた機械的方法ということになります。しかし、この方法の前提としては、スケーラーが歯周ポケットの最も深い部分まで届くということです。このため、スケーラーにもい ろいろな改良がなされてきましたが、5ミリ以上を超える深い歯周ポケットやスケーラーの入りにくい部位(奥歯など)ではスケーラーをポケット再深部まで届かすことが困難でバイオフィルムが残ってしまうことがあります。その場合の対応につきましては次回に述べます。
野口俊英
前回述べましたように、バイオフィルム構造を破壊して目で見ることの出来ない歯肉縁下プラークを化学的方法のみでコントロールすることは現在ではまだ困難です。そこで、実際には歯石を除去する道具の一つであるスケーラーという金属製の器具を用いて歯 肉縁下の歯石と同時にバイオフィルムを機械的に除去し(スケーリング、ルートプレーニング)、その後、薬液を含む水流で洗い流します。いずれも歯科医院で歯科医や歯科衛生士さんに実施してもらうことになります。
野口俊英
歯ブラシの毛先が届かないような深い歯周ポケットに存在するバイオフィルムをコントロールするには機械的な方法と化学的な方法とがあります。そのうちの化学的方法はバイオフィルム構造の表面の細菌をターゲットにしたもので、歯周ポケット内に抗菌剤を永く滞留させ細菌をコント ロールします(ペリオクリン、ペリオフィール)。さらに、消毒剤や抗菌剤などで歯周ポケットの内を洗い流す方法(イリゲーション)もあります。しかし、これらの化学的方法では歯の表面に強固に付着したバイオフィルム構造を破壊することは困難です。さらに、バイオフィルムの表面に糖衣(グリコカリックス)が形成されてしまえば、化学的方法はほとんど効果を発揮しないと思われます。
野口俊英
これまで何回も述べてきましたように、歯肉縁下プラークは目で見ることのできない歯周ポケットの内に存在するため、それを患者さん自身で除去することは極めて困難です。特にプラー クがバイオフィルム構造を有している状態では、特殊なブラッシング法(バス法)を用いて歯周ポケットの浅い部分(約2ミリ程度)のプラークは機械的に除去出来ますが、それ以上深いポケットでは除去が不可能です。このため、歯周病が進行したような深いポケットの場合は歯科医院で除去してもらうことになります。このことについては次回以降に述べます。
野口俊英
これまで述べてきましたように、歯垢(デンタルプラーク)がバイオフィルム構造を有していることが明らかになってきましたので、そのコントロールには十分な配慮が必要となります。
まず、歯肉縁上 プラーク(目で見ることの出来るプラーク)のコントロールですが、洗口剤の効果が届きにくいということから機械的な方法が中心となります。すなわち、歯ブラシ、歯
間ブラシ、デンタルフロスを用いたバイオフィルム構造の破壊です。歯肉炎上プラークはこれらの道具が届く部位に存在するので、適切な道具の選択と使用法により大部分のバイオ
フィルムの除去が可能です。液体歯磨剤を用いれば更に効果が高まるでしょう。
野口俊英