現在、進行した歯周炎に対する再生療法としましては、前回、述べましたようにGTR法とエナメルマトリックス蛋白を用いる方法との2つがあります。今回はそのうちのGTR法について述べます。GTR法は1980年代、北欧において開発された方法であり、これまでの歯周外科では得られなかった歯周組織の再生を実現した画期的な方法でした。わが国では1992年より当時の厚生省から人への応用が認可されています。その原理は歯周組織の1つである歯肉上皮と歯面との付着(上皮性付着)を最小限に抑え、特殊なメンブレンを用いて形成されたスペースに歯根膜組織と骨組織を誘導して歯肉結合組織性の付着と骨の新生を得る、すなわち、健康な歯周組織と同じ構造で歯周炎を治 癒させるというものです。メンブレンには非吸収性と吸収性とがあり、前者はePTFE(expanded polytetrafluoroethelene),後者には合成高分子材料の乳酸・グリコール酸共重合体と天然高分子材料であるコラーゲンが用いられています。いずれのメンブレンを用いても良好な結果が得られていますが、手術の前にプラークコントロールの徹底や病気の原因となった因子を十分に取り除いておくことが重要です。
野口俊英